連合長的愛読世界
<あんたも読め!と言いたい>
 
■Robert B Parker.

●スペンサーを「熱く」語る。

 スペンサーって知ってるかい?ロバート・B・パーカー作、菊池光/訳(早川書房)の私立探偵スペンサーシリーズのスペンサーだよ。知らない人は本屋へ行きたまえ。ハード・ボイルドなんていうと「男の世界」「シブさの追求」なんて思われがちだがこのスペンサーシリーズはそうじゃない。プロットはいたって単純、へたなトリック(日本のミステリーにありがち)もなければ、謎めいたばあさんや嘘臭い伝説も登場しない。あくまでリアリティを追求したまさにアメリカン・ディティクティブ・ストーリー。日本を舞台にリアリティを追求すれば探偵なんて拳銃を持つことすらできない(持った時点でリアリティ度0)悪党ひとり殺すこともできないからトリックに走っちゃうのはしかたないけどね。そんなわけでスペンサーシリーズは絶対推理小説なわけはないしだからと言ってサスペンスでもない。この小説の最大の魅力は、元地方検事局特捜班勤務、スタンドプレーのやりすぎで退職。その後プロボクサーとなり現在に至るスペンサーそのものにある。食通 で料理の腕前はプロ級。しかし、チーズバーガーをひそかに好む。拳銃のホルスターの色が苦心のスタイルと色調が合わないと心配するほどのおしゃれ。どんな苦境に立たされても無駄 口、軽口をたたくのが癖。ジョギングとウエイトトレーニングで体を鍛えている。片手腕立て伏せが得意。しばしば詩を口ずさむ。183センチ、89キロ。 好きな酒はビール。「退職するまでは優秀な警察官だったらしいな。なぜクビになった?」と聴かれれば「命令不服従。おれのいちばんの取り柄だ。」と答え、「いったい何者だ!おまえは!」と罵られれば「歯の妖精。人の歯をぼろぼろにするのが仕事だ。」と言い放つおちゃめなタフガイ。恋人スーザンの顔がプリントされたTシャツを着てジョギングをするといったダサいことも平気でやってのける。相棒の黒人ホークとのウィットにとんだ会話も魅力。現在シリーズ概刊26冊。ぼくのお気に入りはホークが本格的にシリーズに登場する「ユダの山羊」。家族をテロリストに殺害された大富豪が仇を打うつためにスペンサーを雇うといったわりとハードな内容。だけど手始めに読むなら正当に初巻の「ゴットウルフの行方」あるいはスペンサー人気を不動の物にした名作「初秋」あたりがお勧めですわ。

 
■Andrew Vachss.

●バークを「ハード」に語る。

 前科27犯の無免許私立探偵「バーク」の活躍を描いたハードボイルド。こちらは上のスペンサー・シリーズと違ってマジでハードな作品。マンハッタンの裏社会を生きる人間模様をリアルにそして幻想的に描いた衝撃のハードボイルド。「ブッとぶ小説!意気がったやつさえも恐れて出入りしたがらない犯罪の世界を見事に描いている。…ニコラス・ピリッジ」「手の込んだ詐欺、ジェットコースターのような暴力、エモーショナルなセックスなどが、衝撃的なクライマックスに向かって一気に展開していく。…パブリッシャーズ・ウィークリー」と各界から絶賛された注目のシリーズ。そしてこのシリーズ全般 の共通テーマは一貫して「幼児虐待」。作者のアンドリュー・バクスは幼児虐待専門の弁護士で、飢えた子供を救えないかとビアフラに行った経歴を持つ。幼児虐待なんていえば日本の場合親が子をブン殴ったとかいった話だけどそんなショボイ知識の話じゃない。アメリカという国がかかえるこの問題はまさに残酷で切実。ちょっとコワイっす。バークが裏社会で動きだすのは金のためと子供のためそしてファミリー(家族の事じゃない)のためだけである。はっきりいってバーク自身相当な悪党だ。この小説、犯罪の世界を裏の裏までリアルに描きながらも、バークの<ファミリー>として登場するモンゴルの戦士「音なしマックス」、オカマの娼婦「ミシェル」、ナチに殺意を抱いて生きる天才「モグラ」、浮浪者を装うバークの師匠「プロフ」など、そんなヤツいないだろう!?と言いたくなるその登場人物像にはフェアリーテイル的な要素も多分にふくまれている。シリーズは「フラッド」「赤毛のストレーガ」「ブルー・ベル」「ハード・キャンディ」「ブロッサム」「サクリファイス」の全6巻(佐々田雅子/訳・早川書房)。3作目の「ブルー・ベル」はシリーズ中もっとも絶賛された作品。但し、順番に読まないとわけわかんない。
※緊急報告/バークシリーズは終わっていなかった!( さらに詳しく検証!)

■What do you think of she?
●「あたし」(ソニーマガジンズ)¥3,980
 脳死するしかないです。